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静岡地方裁判所 昭和62年(ワ)672号 判決

原告

本橋賢

被告

青木治司

主文

一  被告は原告に対し金四〇九万五六〇一円及びこれに対する昭和六〇年七月六日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の、その一を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し金一三六四万八三一九円及びこれに対する昭和六〇年七月六日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  第1項につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  昭和六〇年七月五日午前七時三〇分ころ、清水市下野四九三番地の一先交差点付近を被告所有の普通貨物自動車を山原方面から高橋町方面に向け運転していた被告は、前記交差点を左折しようとし、その際予め手前からできる限り道路の左側によることなくかつ左後方の安全確認不十分のまま左折進行した過失により、折から並進していた原告運転の原動機付自転車に被告車両の左前角部を衝突させ、その結果原告に右母指伸筋腱断裂、左踵骨骨折、頸椎捻挫等の障害を負わせた。

2  損害は次のとおりである。

(一) 治療費 二七二万〇二一六円

(二) 入院雑費 一七万円

一〇〇〇円×一七〇(日)

(三) 付添看護費 六万九七二八円

一一日間

(四) 休業損害 一九〇万八三〇〇円

原告は事故前二四万四六六六円の平均月収を得ていたが、七か月と二四日間休業した。

(五) 逸失利益 一五五〇万〇八〇〇円

原告は昭和二七年四月一〇日生で前記月収を得ていたところ、右母指関節の屈曲制限、右手握力の著しい低下のため一〇級七号の後遺症認定を受け、三四年にわたり二七パーセントの労働能力を喪失した。

(六) 慰藉料 六〇〇万円

(七) 過失相殺

原告にも車間距離不十分の二〇パーセントの過失がある。

(八) 損害填補 八六四万六九一六円

(九) 弁護士費用 一二〇万円

二  請求原因に対する認否等

1  請求原因1は認める。但し、被告の注意義務違反の程度は争う。

2  同2中(一)ないし(六)、(九)は不知ないし争う。(八)は認める。(七)については、原告の原付自転車が前方注視を著しく怠つて被告の左折車に気付かなかつたことからして、公平の原則からも、原告に三割の過失を認めるべきである。

第三証拠

書証目録及び証人等目録記載のとおり。

理由

一  昭和六〇年七月五日午前七時三〇分ころ、清水市下野四九三番地の一先交差点付近を被告所有の普通貨物自動車を山原方面から高橋町方面に向け運転していた被告が、折から並進していた原告運転の原動機付自転車に被告車両の左前角部を衝突させ、その結果原告に右母指伸筋腱断裂、左踵骨骨折、頸椎捻挫等の障害を負わせたことは、当事者間に争いがない。成立に争いのない乙第一ないし第三号証、第四、第五号証の各一、二、第六ないし第一〇号証によれば、被告には、左折の合図をし、予めできる限り道路の左側端に寄つて徐行し、左側の並進車両又は後続車両との安全を確認して左折進行すべきであるのに、その合図をしたが、予め十分左側端に寄ることなく、かつ並進する原告運転の車両との安全を十分確認しないで時速約五キロメートルで左折進行した過失があり、他方、原告にも、車間距離不十分、前方不注視の過失があると認められる。被告の過失は大であるが、原告の過失割合も三割を下らないというべきである。

二  原告の損害は次のとおりである。

1  成立に争いのない甲第一号証によれば、原告は治療費一一五万一九〇四円を要したことが認められる。

2  成立に争いのない甲第三号証によれば、原告は一七〇日間立岩病院に入院し、雑費一七万円を要したものと認められる。

3  付添看護費を要したことを認めるに足りる資料はない。

4  前記甲第三号証、成立に争いのない甲第四号証、第五号証の一、二によれば、原告は事故前二四万二〇〇〇円を下らない月収を得ていたが、七か月と二四日間休業したことが認められ、休業損害は一八八万七六〇〇円となる。

5  成立に争いのない甲第二号証によれば、原告は昭和二七年四月一〇日生で、前記月収を得ていたところ、右母指関節に著しい屈曲制限を遺したことが認められ、少なくとも、五年間二七パーセント、その後二〇年間一五パーセントの労働能力を喪失したものとみることができるから、逸失利益は、二四万二〇〇〇円×一二×〇・二七×四・三六四三(五年間の新ホフマン係数)+二四万二〇〇〇円×一二×〇・一五×一一・五七九八(二五年の新ホフマン係数から五年のそれを控除したもの)=八四六万五五二〇円となる。

6  慰藉料は六〇〇万円が相当である。

7  損害合計一七六七万五〇二四円となるところ、原告の過失三割を斟酌すると一二三万二五一七円となる。

8  争いのない損害填補八六四万六九一六円を控除すると三七二万五六〇一円となる。

9  弁護士費用は三七万円が相当である。

三  請求は、金四〇九万五六〇一円及びこれに対する昭和六〇年七月六日から支払済みに至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないから、民訴法八九条、九二条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大前和俊)

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